ナム・ジュン・パイク | Nam June Paik | 白南準

今日のテーマはビデオアーティストの「ナム・ジュン・パイク | Nam June Paik | 白南準」。

韓国出身で、1932年生まれ、 2006年に亡くなってしまった韓国系アメリカ人ビデオアーティスト。僕が現代アートに初めて興味を持ったのは彼だと思う。もしそれ以外といなると大阪の万博公園に今でも建っている「太陽の塔」の岡本太郎さんかもしれない…

ビデオアートの第一人者であり、当初はブラウン管に大きな磁石を近づけ、それが発する磁力線で映像を歪めるといったことからはじまったようです。

僕が彼を知ったのはまだ中学生の頃だったと思う。福井県で個展か何かをしていて、そこで「TVガーデン」という作品がテレビで紹介されてたと思う。個展には行けなかったけどそれを見て何か分からない強い衝撃を受けたのを覚えている。

氏は、坂本龍一のPVを作ったりしている(下段にYouTube有り)。

でも衝撃を受けたのはそれよりも「サテライトアート」となるものを発案し、実際にやってのけたということでした。何回かやったようですがその内の1回が日本とソウルとNYを衛星中継したもので、その時は「バイ・バイ・キップリング」というのが本当の名前だったけど、僕の記憶ではテレビ朝日が放送した際にはなぜか「TVオリンピック」みたいな番組名になっていたと思う。その衛星アートで、日本は坂本龍一や当時教授が取り組んでいた沖縄民謡の方々、NYからはコンテンポラリーダンスのマース カニングハムが踊りというものでした。(この方の踊りもとても魅せられる踊りで初めて観た時はショッックでした。もうこの方も亡くなっていたと思います)

あとなぜかファルコのロックミーアマデウスとかトンプソンツインズのHold Me NowとかのPVもコラボレーションされていたと思う。それをザッピングしたりといったアートでした。このタイトルのバイ・バイ・キップリングの意味は、東と西は決して交わらない(いわゆる冷戦時代)とか何とか言っていたキップリングという人の考えを否定するもので、氏は通信衛星を使って宇宙上で大陸間、国々を繋ぎアートを通じて相互理解を得るというコンセプトだったと思う。

ビデオシンセサイザーを作ったりもしていたけど、確かこの頃氏はコモドール社のAMIGAというコンピュータとVideo Toasterというソフトを良く使ってました。動画を動かしながら立体物に加工したり、色んなエフェクトをかけたりと。僕それが欲しかったけど、当時は結構値段も高く手が届きませんでした。ひょっとしたらその時代より前のスキャニメイトというアメリカの動画エフェクト用機材を氏も使ったことがあるのかもしれません。(タツノコプロがタイムボカンシリーズで使ったりしてた前衛的な映像表現ソリューションです)

話しをもとに戻し、そのサテライトアートは正しくは、その行為そのものが結果的にアートになったのかもしれませんね。今は海外中継は殆ど海底ケーブル、光ファイバーを使っているよなので、もし彼がこの作品をもっと後にやっていたらサテライトではなく「海底ケーブルアート」とかになってたことでしょう。ちょっとイメージが変わりますが…

そのサテライトアートですが、一昨年の12月頃に仕事でソウルに行く機会があり、仕事も終わり最終日に帰国するフライトまで時間があったので氏の単館の美術館でもある「Nam June Paik Art Center」というところに行くことができました。ソウルからバスで結構南下しないといけない遠い場所でした。そこは氏の生涯の作品が多数展示されており大変立派な美術館でした。氏の作品はTVを積み上げた巨大な作品、インスタレーションが多いので自ずと規模もでかくなってました。確か入場料すら不要だったような。韓国政府がやっているとしたら大した物です。

その美術館に行った際に、そのサテライトアートの録画版がプロジェクターで再生されていて、久しぶりにその作品を観ることができました。写真撮影も許された美術館だったのでたくさん写真も撮りました。これもいつか整理して掲載します…

そのサテライトアート実行の際は本当に準備や許可?や資金繰りも大変だったようで、確かそのArt Centerに展示されてた手記によるとTBSのディレクターの方とも一緒にやってて、とても協力してくれたとか書いてあったような。(でもTVオリンピックはテレ朝なので矛盾…記憶違いか?!?)

その他に氏の作品を観た場所は色々あり、2000年にNYのグッゲンハイム美術館で大規模な個展があるということでわざわざそれをNYまで見に行きました。その写真もどこかに残っているかも… その時氏はレーザーにハマってたようで、レーザーを使った作品が多かったです。

同じく2000年に出張でソウルに行く機会があり、ソウルオリンピック時の作品「多いほどよい」という1000台以上のTVをタワー状に積み上げて映像を表示する作品を現代美術館に立寄観ることができたり、出張先の企業のビルの1Fにその企業の収蔵物として「TVチェロ」という作品がたまたま展示してて出会ったり。

東京のサムスンジャパンの入っているビルの受け付けの横に一時期液晶ディスプレイを使った作品が展示されてたり、福岡のキャナルシティ博多というところの壁にあったり… と色々なところで観てきました。博多には一人で車で何時間もかけて見に行きました…

 

上の写真は「多いほどよい」

東京では外苑前のワタリウムで個展があったり、品川の原美術館にも収蔵作品があったり、氏の妻のクボタ シゲコさんの作品もそこで観たような..

っと、ここまで書いて結局何が言いたいか分からなくなってしまいましたが、とにかく不思議なアーティストで僕の前衛芸術への興味に強い影響を与えた存在です。

簡単に言うと、いままで全く観たこと、感じたことが無い感覚に対する強い欲求を観たしてくれた存在と言えます。

氏はもう亡くなってしまいましたが、もし存命なら今の映像技術やCGを用いてどのような作品を創るかと想像すると、いや想像もできませんね。HDどころか4K2Kや3Dや何やらと凄いことになっているので。

最後に、氏は今のインターネット社会の出現を明確に予想していた人の一人だったと思います。彼の作品のバイバイキップリングが実行された当時よりももっとバイバイできる環境に既に世界はあるので(衛星ではなくファイバーの高速、大容量で!)まだバイバイできていない国際紛争も何とかバイバイできないものかと切に願うところです。

また氏については色々書きたいと思います。

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